2012年2月9日木曜日

「日本のデザイン」原研哉

読んだ本のことをブログにアップする暇が無かったので、久々にお薦め本を!
原研哉さんの「日本のデザイン」


シンプルという概念の起源はいつからなのか?

原さんは本の中で、シンプルは150年くらい前に出来た概念であると説明している。
物のデザインは、原始的(プリミティブ)な形から始まり、複雑化していった。
複雑なデザインは=権力の象徴として使われ、ロココやバロックなどの様式はまさにそれである。

社会の近代化に伴い、物は力の表徴である必要が無くなった。
椅子であれば装飾よりも、座るものとしての機能が重視されるようになる(合理主義)。
150年前はちょうど産業革命の頃、日本では黒船攘夷騒ぎになっていた頃だ。
合理化の流れの中から、シンプルという概念が生まれた。

権力の象徴である複雑なデザイン ⇒ 合理主義から生まれたシンプルというデザイン

今でも権力の象徴は複雑なデザインにあり、それを誇示するためにテレビに出てくるような成金は、趣味悪の装飾に囲まれているのだな。その人にとっては、権力の象徴としてのデザインなわけだ・・。


さて、原さんの説明では、ここでいう「シンプル」と日本の美意識にある「簡素さ」とは別なのだそうだ。

「簡素さ」 ⇒ ”なにもないことの豊かさ”

「簡素」なものに対する美意識は、西洋にシンプルが生まれるずっと昔、室町時代の東山文化に始まる。日本の美意識にある簡素さは、合理化を追求した成果ではなく、何もないということが意識化され、意図されている。原さんはこれを「エンプティネス」という言葉で説明している。日本の場合これら簡素にデザインされたものが、権力の象徴であったりするからまた面白い(安土桃山時代の茶器のように)。


商品デザインで日本的美観を追求しようとした時、合理化された「シンプル」を求めるのではなく、「簡素」というものを意識する必要があるのだろう。

“なにもないことの豊かさ”

物のデザインを合理的にシンプルにしていくことは実に簡単な作業であるが、そこに「空白」や「なにもないこと」を表現しようとすると、それはとても難しいものだ。

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