2010年6月7日月曜日

「南方録を読む」 熊倉功夫


 
「南方録を読む」熊倉功夫
 
千利休から伝わる侘び茶の秘伝書「南方録」の解説本。
原文と現代語訳、解説文が併記されており、専門用語の解説もあるのでわかりやすい。
 
 
もとになった秘伝書は、南坊宗啓が千利休から聞いた侘び茶の口伝を、書き残したものとされる。それを元禄3年に、立花実山が発見し、書き写したものが「南方録」である。
元禄3年は、千利休没後100年に当り、利休回帰の時代であった。南坊宗啓じたい、実在した人物であるか不明で、立花実山が創作したものではないかとされている。
 
とは言え、立花実山が勝手な茶道論を書いているわけではなく、千利休の時代から伝わる口伝や古書を編纂して作成したものと考えれば、なかなか面白い。少なくとも、元禄の頃の侘び茶の精神が盛り込まれているわけだ。特に最初の「覚書」の項を読むだけでも、侘び茶の思想を読み解く参考になる。
 
 
「師がこういっていた」という書き方は、聖書の福音書にも共通することであるが、ことを成した人は秘伝書など残さないもので、後世弟子やその子孫が、その精神を伝えるために作るものであろう。
 
現代の「茶道」においても「華道」においても、形式や型が重んじられ、一般の人が寄り付きにくい感じがある。利休の時代、精神的な意味合いはあったにせよ、型にこだわりはなかったんじゃないかな。型というのは、師匠となる人間が弟子に教えやすくするためにつくるものだから。マニュアルと同じで、教え手の手抜きのツールであると思う。
 
 
禅の精神性を重んじ、そこに自由な「道」を創造する。
それが「道」であり、現在は通るべき道が限定されているような気がしてならない。
 
 
型破りに生きてこそ、「道」が生まれるものだ。
 

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